
2016年、夏
「沖縄のイノベーション、沖縄からのイノベーション」。
私たちは、新たな未来構想を掲げた。
社会はますます複雑さを増し、多様さを深めていた。ひと昔前の「前提」はもはや前提ではなくなり、社会そしてビジネスのあり方そのものが大きな転換期を迎えていた。
沖縄にはソフト・パワーとしての魅力があった。美しい文化、美しい自然、美しい暮らし。そして、さまざまな領域に、地域を愛し、挑戦するアクターがいた。
しかし、イノベーションは、「従来の延長線上」にはない。現代が抱える手詰まりを、私たちはどうすれば超えていけるのだろうか。
2026年、夏
社会の複雑多元化はますます進み、人工知能などテクノロジーの進展とともに、ポストモダンにおける私たち人間の真価が問われていた。
その頃、沖縄では、従来の「常識」をつき破るイノベイティブな取組みが続々と生まれていた。
私たちは、それら多種多様なプロジェクトのクリエイティブ・ワークチームの形成・展開を担う「新しいタイプの媒介者」として、遠くにあるミッションを見すえ、異質な領域を媒介し、革新的な価値創造を展開していた。
新たな出会いを楽しみ、望ましい未来を描き、自らを意図的に多様化しながら、異質なものが参集し、関わり合い、学び合う。そんな「開かれた対話と創造の場」をつくり続けた10年。
そして、ふとした瞬間に、より良き社会・地域・生活を実現しつつあるとともに、自らの他者や世界への関わり方・認識の仕方が、以前と比べ、より人間的で、よりあたたかなものに変わってきていることに気づく。
イノベーションの源泉は、絶えざる自己再創造という日々の営みに潜んでいるのかもしれない。
「インターミディエイター」という新しい役割
私たちのような新しいタイプの媒介者は、「インターミディエイター」と呼ばれ、10年前には存在しなかった新しい職業となった。異質な領域を媒介し、それまでにない変化を生み出す「あいだの知」の担い手。
そして、沖縄のイノベーションの胎動は、日本ばかりでなく東アジア圏に変革の兆しを生みだし始めた。
世界とは「関係の網の目」。組織も地域も社会も、いたるところがきれぎれになっている現代にあって、それぞれの「あいだ」を多次元で媒介するインターミディエイターは、あらゆる場面・局面でますます必要とされている。
創造とは媒介である。私たちは、「媒介する」ことで、世界をより創造的で、より人間的な場へと変えていくのだ。
